ダビンチ。 手術支援ロボット「ダヴィンチ」徹底解剖|東京医科大学病院

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ダビンチ

小島医師 ダビンチは主に、ガンやポリープなどを切除する「腹腔鏡手術」を支援するために使われています。 特に導入が進んでいる米国では、今まで高度な技術とされている腹腔鏡手術がロボットを使うことで比較的かんたんに手術できるということが浸透してきて、泌尿器科や婦人科を中心に「開腹手術」からロボットによる「腹腔鏡手術」への置き換えが急速に進んでいると言われています。 日本でも、保険が適用される泌尿器科の前立腺ガンなどの手術を中心に使われてきました。 そこでは手術成績や機能温存に明確な成果が出たことで、ロボット支援手術を希望する患者さんが集中していることも報道されています。 小島医師 日本では諸外国に比べて、ロボット手術のメリットが見えにくいのが実状です。 というのも、以前より腹腔鏡手術が医師の手によって盛んに行われてきたからです。 日本では、腹腔鏡手術を医師の手で手術を行うか、医師がロボットを使って手術をするか、という選択になります。 ロボット支援手術になると医師の負担は大きく減って正確さも向上するものの、患者さんにとってのメリットが出しにくいのが実状でした。 そんな中、今年の4月に保険適用の術式が増えたので、今後は患者さんにとって費用面の課題がなくなるため、私が担当する呼吸器外科でもロボット支援手術の導入が増えていくと予想しています。 ロボット手術センターとしては「 ロボット支援手術を取り入れていない外科病院は、今後やっていけなくなるのではないか」というつもりで準備をすすめています。 ロボット支援手術を取り入れていない外科病院は、今後やっていけなくなるのではないか。 それほどまでインパクトがあるダビンチによるロボット支援手術の実際を更に詳しく知りたいと感じた。 まずは「開腹手術」と「内視鏡手術」、「ロボット支援手術」の違いから解説しよう。 開腹手術と腹腔鏡手術 もし、手術を担当する医師から「お腹を大きく切る手術と、小さい穴をいくつか開けて行う手術と、どちらを希望しますか? 」と言われたら、多くの人は後者を選択するだろう。 世界的に見ると、外科手術ではお腹や胸などを縦や横に大きく切って開き、手を入れて施術する「開腹手術」 開胸手術 が多く用いられる。 開腹手術ではケースによっては手術による傷跡が大きく残ったり、手術による傷が回復するのに時間がかかることもある。 手術による傷の大きさを最小限に抑え、術後の回復期間も短くできるという利点があるのが「腹腔鏡手術」 胸腔鏡手術 だ。 内視鏡手術と言った方が解りやすいかもしれない。 腹腔鏡手術ではお腹に複数の比較的小さい穴を開け、内視鏡と鉗子やピンセット、尖刀等のアームをその穴からお腹などに入れて、カメラとアームを使って手術を行う。 なお、傷口が小さく身体にやさしい、早期に社会復帰できる手術を「低侵襲手術」と呼ぶ。 しかし、低侵襲の腹腔鏡手術には特別なスキルが必要とされる。 鉗子や尖刀等の手術用の器具は真っ直ぐな棒状。 内視鏡カメラで見えるモニターの限られた視界の中で、基本的には真っ直ぐな棒のアームを駆使して、血管など大切な周囲の組織を傷つけずに患部を切ったり縫ったりするのは繊細さが必要だ。 そのため、腹腔鏡手術を行ったものの、状況によって手術の続行が困難だと医師が判断した際は、開腹手術に移行するケースもあると言う。 こうした背景もあり、細かで繊細なスキルが必要な医師の手による腹腔鏡手術は 手先が器用な 日本や韓国がリードしてきた。 海外では腹腔鏡手術のメリットは理解されていながらもその難易度から一般的とは言えない状況だった。 腹腔鏡手術の難易度を下げるロボット「ダビンチ」 そこに登場したのがダビンチだ。 最新型のダビンチXiは4本の腕を持ち、内視鏡と3つのアームを入れることができる。 更にはそのアームの先端部分にいわば手首のように曲がる関節があって、医師の操作によってお腹の中で先端の向きを比較的自由に変えることができる。 開腹手術と比較して腹腔鏡手術は患者のダメージが少ない。 腹腔鏡手術は真っ直ぐな棒の鉗子類を使うので高度な技術が必要だが、ロボットによる腹腔鏡手術 ロボット支援手術 なら関節がある鉗子類を用いるので難易度が下がる。 また、ロボット支援手術はトレーニング学習にも最適で、シュミレーターへの展開も期待できる 資料提供:聖路加国際病院 「泌尿器科」での実績が多数 ダビンチは現在「泌尿器科」での利用と実績が最も多い。 その理由は泌尿器科の手術は骨盤の奥にある膀胱や前立腺など、極めて狭い領域での手術になることが関係している。 アームの先に関節があって曲げられるため自由度が高く、更には3Dで立体視できるカメラシステム、手ぶれ防止機構など、さまざまな最新技術を使って大きな成果が得られることが、数々の実績で証明されてきたと言える。 これを受けて、日本でも早期からロボット支援手術が前立腺ガンや腎ガンなどでは保険が適用されてきた。 患者の費用負担が少ないことも「泌尿器科」での実績が多いことの一因になっている。 ここで今度は、患者にとってのロボット支援手術のメリットをもう一度見てみよう。 「腹腔鏡手術」は一般に出血量も少なく「低侵襲」で早い社会復帰が見込めるため、患者にとってメリットは大きい。 ところが、既に医師の手と器具による従来の腹腔鏡手術が行われてきたため、あえてロボットを使って行う手術のメリットが見えにくい。 また、多くの手術 術式 ではロボットの使用に保険が適用されてこなかったため、全額自己負担で手術代を多く払ってまでロボット支援手術を選択する理由が乏しかった。 一方で、保険の適用がある泌尿器科の前立腺悪性腫瘍手術などにおいては、医師の手による手術とロボットを使った手術の費用が変わらないため、今ではロボット使用が症例数が急増していて、ロボット支援手術が可能な病院が患者に選ばれる、という傾向にあると言う。 12術式でロボット支援が保険適用に そして今春、その状況に大きな変化が起こった。 2018年4月に12の術式においてロボット支援手術のメリットが認められ、保険適用となったのだ。 それは泌尿器科に留まらず、多くの診療科でロボット支援手術の導入が加速する可能性を示唆している。 続いて、ダビンチの概要を写真を交えて見ていこう。 普段は手術室で活躍しているダビンチを見られる貴重な機会だ。 ダビンチXi の構成 ダビンチは大きく分けて3つの装置で構成されている。 ひとつは医師が操作するために着座し、ロボットアームやカメラで視界を制御するための「サージョンコンソール」だ 下写真のA。 コクピット 操縦席 とも呼ばれる。 ふたつめは手術台の前に立って実際に手術を行うロボットアームを持った「ペイシャントカート」 B。 ダビンチが手術台の患者を手術するロボットだ。 3つめは手術中のダビンチの3D内視鏡カメラ映像を最適化する「ビジョンカート」 C だ。 モニター画面はタッチパネル式。 画面に指を当てて文字や矢印等を画面上に記入することができる。 これによって、執刀医以外の医師や看護師と、画像を通してコミュニケーションをとったり、指示を仰ぐなどの利用方法が想定されている。

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手術支援ロボット「ダヴィンチ」徹底解剖|東京医科大学病院

ダビンチ

2018年、大ヒットしたドラマ「ブラックペアン」には「スナイプ」と呼ばれる最新手術医療器具が登場したが、ロボットや機械が手術を補助する場面は今後ますます増えると推測される。 なかでも、先端を行く存在として注目されているのが手術支援ロボット『ダビンチ』だ。 ダビンチによる手術を行うニューハート・ワタナベ国際病院を訪ね、ロボット手術の現状や課題、医療の未来について話を伺った。 痛くない、血が出ない。 患者の負担が最低限で済むので、最短3日で退院できる。 米粒にすら文字が書ける精密さ。 医療用ロボット「ダビンチ」とは? まず最初に説明しておきたいのは、ダビンチとは厳密には「ロボット」ではなく「世界初、遠隔操作型の内視鏡器具」であるということ。 「現在はマニュアルを基にした医師の操作が必要ですが、いつか熟練した人の腕を再現できるような時代が来るのだろうという希望をこめて、ロボットと呼んでいるのかもしれません」 そう語るのは、ニューハート・ワタナベ国際病院 総長 兼 理事長の渡邊剛氏。 ダビンチ を使用した心臓弁の形成術や、心臓の血管を繋げるバイパス手術をはじめとした心臓血管外科領域において国内外での豊富な経験を誇り、日本ロボット外科学会の理事長も務める、まさにダビンチを広めた第一人者だ。 ニューハート・ワタナベ国際病院 総長 兼 理事長・渡邊剛氏 ダビンチと従来の内視鏡との違いは、まずその機能性と自由度の高さにあると言えるだろう。 3D内視鏡で捉えた患者の術野を立体画像として映し出すステレオビューワ、鉗子 「ペアン」に代表されるように、手術や治療の際血管などの組織をつまむ器具のこと や内視鏡カメラを自在に操作できるマスターコントローラ、瞬間的に鉗子や3D内視鏡の切り替えができるフットスイッチなどを駆使し、医師は患者から離れ、座った姿勢のまま遠隔操作で執刀する。 動かした手の幅を縮小して伝えるモーションスケール機能を使えば、手を5cm動かすと、鉗子は1cm動く仕組みに設定ができるし(この対比は2対1、3対1にも設定可能、手術前に設定した後、術中の状況に応じて変更することもできる)手ぶれ補正機能や左右を反転できる機能など、狭い空間での作業や、血管の縫合や切除なども精密さを求められる作業にも適している。 また、鉗子の種類も100種類ほど揃っており、臓器や目的に合わせた器具が発展しているそうだ。 「ダビンチを使うメリット、それは、まず患者さんの負担が少ないことです。 患者さんの皮膚を1~2cmの幅で数か所切開し、そこから鉗子を挿入して手術をするので痛みも少ない、開放手術と比較すると出血が少ない、小さな傷口を開くだけなので、術後の疼痛が軽減され傷が早く治る、手術後に後遺症も残りにくく、手術痕が綺麗なことが特徴と言えるでしょう。 当然、手術する部位や状態にもよりますが、最短であれば術後3日で退院して、仕事や学校に復帰することができますよ」(渡邊氏) 早く退院できるというのは、手術後回復を待っている間に体力が低下してしまい、そのまま寝たきりになってしまうことも多い高齢者の手術にも大きな効果が期待されるであろう。 ダビンチは2000年に米国で誕生した。 当時、世界で初めての内視鏡下冠動脈バイパス術を行った渡邊氏は、いつかダビンチを使って心臓の手術を行いたいと考えていた。 大学への交渉や文部科学省からの資金拠出を経て、渡邊氏が日本国内ではじめてダビンチを使った手術を行ったのは、金沢大学と東京医大で教授職に就いていた2005年のこと。 2009年に先進医療として認定されるまでは、研究費でダビンチによる手術を行うなど、試行錯誤を重ねながらもチーム ワタナベは2005年12月から2018年10月にいたるまで、553件もの手術を実施してきた。 そして、2014年に開業したニューハート・ワタナベ国際病院では弁形成術をはじめとして、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、心臓腫瘍などの心臓手術のほか、国内で唯一のダビンチによる甲状腺手術も行っている。 「年間、弁形成の手術が4000例ほどあるなかで、私たちが担当しているのはその5%、200件ほど。 シェアという意味では大きいですが、保険適用がスタートしたのは2018年の4月とごく最近のこと。 認知が広がっていくのはこれからではないかと考えています」 医師の腕が手術のクオリティを左右する。 誰にでも扱える万能なロボットではない。 元々、心臓外科の手術用で始まったダビンチ、現在アメリカでは2500台ほど導入されており、そのなかでも泌尿器科の手術の8割以上はダビンチで行われている。 この15年で、開放手術の件数とは逆転現象が起こったほどだ。 一方、日本に入ってきたダビンチは500台ほどで、泌尿器科での件数はようやく6割に届く程度と言われている。 患者数や医療制度は国ごとに異なり、一般化することは難しいながらも、これまで日本での普及がなかなか進まなかった理由は、コストの問題と並んで、医師の腕が大きく左右される手術であることも大きく関係している。 「胸やお腹を大きく開けば、術部がよく見えるし、どこまで取るか、どう縛るかなど相談もしやすく標準化できます。 しかしダビンチをはじめとした内視鏡手術は、ほぼ1人で手術を行うもので、手術時間にしても吻合技術 心臓血管手術において血管等を繋ぎ合わせる技術のこと にしても、医師の腕が手術のクオリティに大きく影響してしまいます。 ダビンチは誰でも使える万能なロボットだと思われることもありますが、結局は医師の判断や裁量によるところが大きく、誰が使ってもいいものではありませんし、新しい技術に挑戦するには勉強も臨床経験も必要です。 たとえば車の運転がロクにできない人がF1カーを運転したらエンジンをかけることもままならないですよね。 自分のかわりに手術を行ってくれるロボットではないですから、ダビンチを使って手術ができるようになるためには、まず外科医として一人前にならなければならない」(渡邊氏) 日本ロボット外科学会の サーティフィケートが今後の判断基準になる 更なる認知の向上を目指すも、医療機関はもちろん広告を出すことはできず、インターネット上に患者さんの声を反映する際にも制約がある。 それでも、「日本に導入したものの責任として、安全に正しく広めることが必要だと感じています」と語る渡邊氏は医師の育成もかねて、日本ロボット外科学会を立ち上げた。 経験や症例数に応じて、国際A、国際B、国内A、国内Bの4種類のライセンスを与え、認定証書を授与している。 「このサーティフィケートが今後、患者さんの判断基準にもなっていくと思います。 より認知が広がっていけば、大腸がんならこの病院、甲状腺ならこの病院、と手術を受けるべき病院も分かって、後悔のない治療を受けられるのではないでしょうか」 まだ、件数は少ないものの、これからは産婦人科の手術での活躍に期待が集まっている。 泌尿器などに比べると、産婦人科は臓器も病気の種類も多く、より多くの患者に安全な治療を施せる将来性にも満ちている。 日本に導入しようとした当初は、厚生労働省から薬事法承認が下りるまでのハードルが高かったダビンチも現在は第4世代まで進んでおり、川崎重工とシスメックスによる国産手術支援ロボット「メディカロイド」も2019年の販売に向けて開発が大詰めを迎えるなど、技術の進歩は止まらない。 今後、患者にとって当たり前の選択肢としてロボット手術がより発展していくことに期待したい。 text: Yuka Shingai photo: 河村香奈子•

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ダビンチキッズ

ダビンチ

特徴 「ダビンチ」は最新の手術支援ロボットです。 低侵襲であることに特徴があり術中、術後の負担軽減につながると期待されます。 当院では「ダビンチx」という機種を導入しています。 開腹手術における切開部の例(左) ロボット支援手術における切開部の例(右) 通常の開腹手術とくらべ体への負担が小さいとされ、体に小さな穴をあけロボットアームを操作することで手術を行います。 術者は操作用コンソールで立体内視鏡カメラ映像を見ながらロボットアームを操作します。 アームには様々な機能を付加し、直感的に操作できるようになっています。 内視鏡カメラは体内を高解像度のハイビジョン立体映像として映し出すことができます。 ズーム機能によって今まで見ることが難しかった組織の様子を確認することができ、より精密な手術の実現につながります。 適用症例 当院では前立腺全摘手術を対象としています。 泌尿器科外来にて医師にご相談ください。 3本のアームにはロボット専用鉗子を接続し、残る1本には3Dカメラが取り付けられています。 アームカメラと鉗子がついた3本のアームを自在に操作することができ、複雑で精緻な手術操作を行うことができます。 診療体制 泌尿器科外来に受診していただき、ダビンチによる手術の可否などについてご相談ください。 費用 ロボット支援手術及び入院の保険適用時の費用は症状、入院期間、年齢や年収、健康保険制度によって異なりますのでお問い合わせください。 また、高額療養費制度を利用することでより負担額を少なくすること可能です。 一般の方へ 外来診療に受診していただき、医師と相談しながらロボット支援手術が適用できるか決めていくこととなります。 医療機関の方へ 貴医療機関に受診中の方でPSA検査高値の方やロボット支援手術をご希望される方がいらっしゃいましたら、ご紹介くださいますようお願いいたします。 その際には紹介状を発行いただき、当院地域医療連携室にFAXにて受診予約していただくか、患者さんにご自身で受診予約していただくようにご案内をお願いいたします。 よくあるご質問 Q どんな病気の手術でも手術支援ロボットが使えるのですか。 A 手術が必要な病気のすべてでロボット支援手術が行えるわけではありません。 当院では泌尿器科の前立腺全摘手術から適用を始めております。 Q 費用はどれくらいになるでしょうか。 A 当院でのロボット支援手術実施は健康保険の適用範囲としております。 実際の費用は手術内容、入院期間、年齢、収入などによって異なりますのでご相談ください。 また、高額療養費制度を利用することで負担額を少なくすることができます。 Q 手術支援ロボットを用いた手術を受けたい場合はどうすればよいでしょうか。 A 外来診療を受診し、医師と相談していただきながら適用できるかを決めていくこととなります。 Q 手術はすべてロボットが自動で行うのですか。 A ロボットは手術支援を目的としており、手術は医師が実施します。 手術支援ロボットは医師の手の代わりとして術野で細やかな動きをすることによって術者をサポートします。 また、手術を実施する医師はトレーニングを重ね認定資格を取得しております。 Q 高齢でもロボット支援手術を受けることができますか。 A 開腹手術、腹腔鏡手術が可能な状況にある患者さんであれば、ご高齢の方でもロボット支援手術を受けることが可能と考えられます。 ただし、手術適用の症状の他に持病がある場合や他の要因によって異なります。 ロボット支援手術の適用については、患者さんの状態によって医師が判断します。 本文ここまで.

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